女王様のため息



司が一番気に入っている部屋以外の物件も見たくて、4人で司の車に乗り込んだ。

夕べ、飲んで酔いつぶれた司と春岡さんを乗せて、司の車を運転して帰ってきたのは美香さん。

明け方、司を部屋まで送り届けたあと、美香さんと春岡さんはホテルに部屋を取って仮眠をとったらしい。

そして、司と私は司の車でホテルまで迎えに行って物件を案内してもらっている。

「司くんがね、どうしても今日真珠ちゃんにあのマンションを見せたいって言ってきかなくて。だから仕方なく夕べ私が運転して連れて帰ったのよ。
ふふ、私と滉介ね、さっき見たマンションの近くに住んでるの。
だから、私も真珠ちゃんがあのマンションを気に入ってくれたら嬉しいな」

「え……」

助手席に座っている私に、後部席から明るく話しかけてくれる美香さんの言葉は、ただでさえ驚きでいっぱいの私の体に大きく響いて。

思わず隣の司を見てしまう。

ハンドルを握っている司の横顔には、苦笑いが浮かんでいて、まるで美香さんの言葉を予想していたように見える。

「あの辺りっておいしいパン屋さんやカフェもあるから、最近雑誌にも取り上げられてるの。他にもお勧めのお店や施設がたくさんあるから、案内したいんだけど。まあ、司くんがいいって言ってくれればだけど」

美香さんのくすくすとした笑い声が車の中に響いて、美香さんの隣にいる春岡さん……滉介さんが『調子にのるなよ』と彼女の頭をこつんと叩いた。

「えー。だって、真珠ちゃん、司が言ってたよりも可愛いんだもん。
『側でずっと見張っていたいくらいに好きだ』なんて真剣に言うくらいに大好きな真珠ちゃんだもん、私だって好きになるの当たり前でしょ?」

からかうような美香さんに、司は大きくため息をついて、

「美香、車止めたら覚えてろよ」

唸るように言った。

『側でずっと見張っていたいくらいに好きだ』

って。

「本当に?……本当にそう言ったの?」

その言葉に驚いて、そして嬉しくて。

思わず大きな声で、運転中の司に向かって叫んでしまった。