女王様のため息

司にとられないように大切にスマホを抱きしめていると、私の背中越しに手を伸ばす司と体が触れ合う。

背中に感じる司の体温が私をどんどん包み込んで、思いがけず気持ちが震えた。

私を抱くように伸びてきた司の手を振り払う事も、それから逃げる事もできないままじっと体を丸めた。

スマホを守るふりで、今の自分の顔が司に見られないように俯いていると、手元のスマホがぶるぶると震えだして軽快なメロディーが流れた。

「あ、ごめん」

その場の空気を変えるように、司からそっと体を離して画面を見ると、『海』。

瞬間、はっと思い出した。

コンパ押し付けちゃってたな。

仕事も忙しかったし司とこうしてラーメン食べに来てすっかり忘れてた。

そろそろお開きの時間だし、無事コンパ終了の連絡かな。

でも、きっと怒ってるんだろうなあ。