「美香さんと二度と会わないでって私が言ったらどうするの?」
意地悪な気持ちを隠さず、低い声でそう聞くと。
「今はまだそれはできないって真珠に謝る。真珠には申し訳ないけど、もうしばらくは美香の様子が気になるんだ」
私に対して罪悪感を感じているような、ほんの少し心細げな声だけど、美香さんと完全に縁が切れたわけじゃないとあっさり認められて、いい気分じゃない。
「じゃ、私も今まで通り、海とは仲良くやっていくから文句は言わないでね」
「それは、嫌だ」
「はあ?どうして司は美香さんと会うのに私は海と会う事に文句を言われなくちゃならないの?」
「会うな、とは言わないけど……もちろん会って欲しいなんて思わないけど。
文句は言う。
自分の恋人が、俺以外の男と会う事に文句言わないわけないだろ。
海くんと真珠の関係には何かあったってふんでるし」
「……」
はっと黙り込んでしまった私に、司はチッと舌打ち。
「おい、ここで黙るなよ。何かあったって認めたようなもんだろーが」
一気に熱くなった声に、お店の人たちの視線がちらりとこちらに向けられて、作り笑いを浮かべてごまかしてみる。
司は、眉を寄せたまま私に厳しい目を投げるけれど、周囲の注目に気づいたのか少し声を落とすと。
「やっぱり、俺は海くんから真珠を奪わなきゃいけないのか?
もしそうなら、土下座してでも真珠を俺のもんにするけど?」
「はあ?ど、土下座?」

