口元を引き締めて、不機嫌な気持ちを露わに見せる私に。
「自分勝手な要求だけど、実際そうだから。
真珠を好きになってから、それこそ一生分悩んだ俺には、これ以上悩みに費やす無駄な時間はないんだ。
真珠がどう受け止めようが、俺がどんな無茶な事を言おうが、お互いを想い合ってる気持ちがあれば、それでいいだろ?
結局、一緒に生きていきたいって事だろ?」
「……」
ん?と視線を向けられても、今の私に、何を、どう言えと。
この自信に満ちている男には、私が反抗する言葉を幾つ並べたとしても理路整然とそれを打ち砕く用意があるに違いない。
入社してからずっと司の隣にいて、彼の事を少しずつ理解していたつもりだけれど、今私に見せている顔は、初めて見せられた男の顔。
私に対してここまで余裕の言葉を表情を惜しみなく出すなんて、想像していなかったな……。
きっと、美香さんの存在ゆえに私に遠慮もあっただろうし、司自身の気持ちを素直に出せない葛藤も大きかったはず。
私にはわからない苦しみと、体中が痛くなるような慟哭。
人知れず、抱えていたに違いない、けれど。
それでも、なんだか。
妙に負けた気がするのは何故だろう。
このまま司の想いをまっすぐ単純にあっさりと、それこそ笑顔で受け止める事が悔しく思えるのは、私の勝気な性格のせいなのかもしれない。

