女王様のため息



今までにない甘い司の様子に驚きながら、そしてくすぐったくて嬉しい思いを感じながら。

「あー。ほっとした」

大きく深呼吸する司に苦笑もした。

入社して以来、私への好意を持ちながらも、不安定な美香さんから離れられずにいた司は限界ぎりぎりだったらしい。

美香さんにしても、心から自分を愛してくれない男性が側にいてくれることに寂しさと申し訳なさを感じながらも、一度自分の体を傷つけて、命を断とうとした事が尾を引いて、自分自身を信じられなくなった。

誰かが自分の側にいてくれなければ、寂しさに耐えられなくなって潰れてしまうかもしれない。

そうなった時に、ちゃんと自分で自分を支える事ができるのか、二度と命を粗末にしないと誓えるか、全く自信がなく、それが怖くてたまらなくて。

たとえ自分を一番に愛してくれなくても、側にいて見守ってくれる程度の好意は持っている司を解放する事はできなかった。

「俺が離れても、大丈夫だって美香が思えるまでにはかなりの時間が必要だったし、これから彼女がどういうペースで強くなっていくのかはわからない。
これからも、親しい友達として見守っていくけど、今の彼女には彼女だけを愛している男がいるから、俺が気にかけたとしても、美香にとって俺は過去の名残だ。
真珠がどんなに不安になったとしても、俺と美香には何も起きないって事だけは信じてくれ。
俺に対する不安のせいで涙に暮れて、仕事も手につかなくて食欲も落ちるような毎日を過ごすことになったとしても、俺を信じて欲しい。それが、正解だから」

あまりにも滑らかに、明るい口調で私に諭す司の言葉は、落ち着いてじっくりと考えてみると。

「すごく、自分勝手な事を要求するんだね」

私は眉間のしわを気にしながらも、きつい声音を隠すことなく、言ってしまった。