ざわめいているお店の空気に溶けるように、司の笑顔が自然に浮かんでいる。
何の迷いも、ためらいも感じられないその瞳は、私を絶対に逃がさないと告げるように強く射る。
もちろん、私の全てを。
私の体中の血が逆流するみたいにどくどくと音を立てていると錯覚するように時間が過ぎて行く。
「真珠がどんなに苦しくても、俺は真珠を幸せにしてやる。
だから、ずっと俺の側にいろ。
ただ、俺を愛していれば、それでいいから」
「……甘い、甘すぎ。司じゃないみたい」
「くくっ。甘いな、本当。でも、真珠にだけだし、これが本当の俺だ」
それまで頬に置かれていた司の指先がすっと離れて、はっとした時には。
「い、痛いっ」
私の鼻を指先でつまんで、いたずらっ子のように笑っていた。
「ほーら、捕まえた」
それが、とどめ。
捕まえられた、に違いない私への最後通牒と、とどめの言葉。
……甘すぎて、涙があふれるよ……。

