そんな、私の俯きがちな想いを汲み取ってくれているはずなのに、司は相変わらず軽やかな声と笑顔を浮かべて
「悪いな、どんなに真珠が不安になっても、俺は真珠を他の男にやるつもりもないし、俺の側から手放さないから。もう、諦めてくれ」
すっきりとした声で言い切った。
このお店に来てからずっと、二人の間に漂っていたはずの重い空気とは反対の、どこかわくわくした感じすらする司の様子に、私は言葉を失って、ただ見つめるだけ。
私に謝りながらも、手放さないって、何だかおかしいって。
そう思う自分がおかしいのかと思うほどに司は落ち着いているせいか、何も理解できない。
「えっと。司?」
「ん?」
「あの、よく、わからない……んだけど」
「わからなくても、つらくても、真珠は俺の事が好きなんだろ?
なら、その気持ちだけを信じてくれ」
「す、好きだけど……でも」
司と美香さんとの長い付き合いによって生まれる不安が原因で、素直になれない私の気持ちは、ちゃんと司に届いてるのか、わからなくなってきた。
美香さんの存在が脅かす、私と司の関係の不安定さが、司を単純に受け入れる事に二の足をふんでしまっているって、目の前のこの男は、ちゃんと理解してくれているんだろうか。
「司、なんだか明るすぎない?ちょっとは悩んでよ」
思わず拗ねた声で眉をひそめる私、それが司の気に障ったとしても、仕方ないと思う。
「司のせいなんだからね。美香さんとの関係をすっきりさせないから、私が悩むんじゃない。なのに司、笑ってるし、変。本当、変」

