女王様のため息


少しずつ行列が前に進んでいって、私たちの順番も近くなる。

司は、並んでいる他の人たちから私を守ってくれるように私の腰に手を回してそっと引き寄せてくれた。

「酔っ払いがうろうろしてるから気をつけろよ」

耳元で囁かれると、何だか腰が砕けそうだ。

長い間恋人のいない生活に慣れていて、こんな簡単なスキンシップにさえどぎまぎするなんて。

女王様と呼ばれている私、もっとしっかりしろ。

司にどきどきしている気持ちがばれないように気をつけなきゃ。

そりゃ見た目は抜群で連れて歩くのならピカイチだし、仕事だってできる。

先月は社内の優秀社員賞をとってたし。

そして性格だっていいときたら。そりゃどきどきもするでしょ。

会社で厳しく後輩を指導して、先輩からの嫌味や無理を笑顔で交わしながら必死で仕事をしている私。

毎日気持ちが張りつめていていっぱいいっぱいの私だから、誰が見ても一発で堕ちそうな司の体温を感じればそりゃもう。

足に力が入らなくても、仕方がない。

それでも、司に堕ちないように気持ちを引き締めて、何が何でも踏ん張るのは。

「司は彼女とラーメン食べに行ったりしないの?」

ずっと隠し続けている、私の司に対する気持ちを抑えるように、笑顔を向けた。

そう、司には可愛いと噂の彼女がいるから。

私の気持ちは隠し続けているんだ。