咄嗟に抵抗してはみたものの、やっぱり男の力に勝てるはずもなく、あっという間に紙袋は水瀬の手に渡ってしまった。


「だめだって水瀬!コレはマズイから…!」

「…黙っとけ」


紙袋の中から、中身を取り出そうとしている水瀬の肩をゆすってみるが、睨みと低い声に寒気が走る。
奪い返すのは不可能だと思い、私はうなだれてしまった。






「え、…何だよこれ」


しばらくすると、水瀬は紙袋の中身を確認したようだった。

そりゃびっくりするよね。だって、猫セットが入ってるんだから。
しかも、その……、なんかエロイし。




「えっと、だからそれは…」


さすがに言い訳を考えることも出来なかった。
下手な言い訳を言ってしまって、変な誤解されても困ってしまう。


「うちのクラスお化け屋敷するんだけど、…それで着るんだって」

「お前が?」

「え、うん…」


間髪入れずに質問されて、少し驚いた。
気がつくと水瀬の顔は、意地悪なものからだんだんと険しいものになっていた。




な、なんか…。
やっぱり、今日の水瀬おかしいぞ…?

表情がコロコロ変わるし。




水瀬の顔を観察しながら、そんなことを思わずにはいられなかった。
すると、水瀬の手が不意に上がる。


「へ…!?」


何かと思い、思わず声を上げて目をつぶると、頭の上に優しい温もり。
恐る恐る目を開けてみると、今度はなんだか機嫌の悪そうな水瀬の顔があった。


「そんなに怖がるな。俺は怪物か」

「え、あ…、いやー…」


思わず『はいそうです』と言ってしまいそうになってしまうけど、何とか抑える。