気付けば時計は、午後7時を知らせていた。
「おい、施錠にきたけど誰かいるのか?」
柴本くんは、まだ目を覚まさない。
戸惑っているところで、保健室のドアがガラっと開いた。
「何だ、二条か。今日は生物室に来なかったからどうしたのかと思ったら……こーゆーことか」
そう言い放ったのは、生物の倉持[くらもち]先生。
私が放課後に生物室にいる理由を知っている、唯一の先生だった。
「何を想像しているのかはわかりませんが……。おそらく先生の想像はハズレです」
「へぇ。じゃあ何でここで柴本が寝てるわけ?」
「私にもわかりません。私が起きた時はすでにここにいて……。起きないので寝かせておきました」
そう言うと、倉持先生は反対側のベッドに座って、私と向き合うような形になった。
細身の黒いフレームの眼鏡に、すらっとした体。
どこにも無駄を感じさせないようなしなやかな動作が大人っぽい。
「俺は、今日もお前が来ると思って待ってたんだけど? 少し気になる話もあったし」
「気になる話?」
「そ。まぁ、こいつがここにいるなら別に俺が話さなくてもいいか」
先生は、勝手に納得したように頷くと立ち上がった。


