ファンタスティック·レボルバー

「柴本くん。起きて」


「………………んっ……」


「柴本くん」


「…………」



何回か肩を叩いてみた。

何回か肩を揺すってみた。

調子に乗って、1回だけ頭を叩いてみた。



それでも、柴本くんは鬱陶しそうに唸って首を動かすだけで、全く起きる気配がない。



疲れてるのかな……。

いつも練習頑張ってるからかな……。



そう思うと、彼を無理矢理起こすのは可哀想に思えてきた。



せめて、今だけでもゆっくり休んでもらいたい――――



……彼を、そっとしておこう。



施錠時間の7時まで待っていよう。

そして、事情を聞いて、お礼を言おう。



そう決めてから、ふとベッドの下を見た。



彼が持ってきてくれたのだろうか。


彼の足元には、2つの鞄が寄り添うように置いてある。



黒くて艶やかなスポーツバッグと、紺色で布製のスクールバッグ。



私は紺色の鞄からそっと本を取り出して、読書をしながら待つことにした。