「せっかくレボルバーが優秀なんだから、フル活用しないとね」
そう言うと、柴本くんは私を持ち上げて、机の上の顕微鏡の隣に座らせた。
「えっ?」
――――直射日光の当たらない水平なところに置いて下さい。
「レンズはもともとOKだし」
――――接眼レンズを取り付けて下さい。
―――――対物レンズを取り付けて下さい。
「僕、妹以外にこんなに女の子に近づいたこと初めてだ」
――――レボルバーを静かに回して最低倍率にし、しぼりを開いて下さい。
そして、私達は少し薄暗い生物室で初めてのキスをした。
私の目は太陽を直視する能力を持たないらしい。
でも、どんな倍率にしても、柴本くんに、……幸哉にしっかりとピントを合わせる能力を持っているらしい。
そっと唇を離した私達は、どちらともなく微笑んだ。
生物室の施錠は、まだもう少し先みたいだ。
END