「大丈夫か?
……えぇっと、お二人ともすみません。あとは僕が何とかしますから。お引き取り下さい」
柴本くんの声だ……――――
きっと、私の肩の手の正体も柴本くんなのだろう。
「えっ、でも……」
「お引き取り下さい」
返事を渋っているナナに、柴本くんがもう一度言った。
少し小さな声で文句を言いつつも、「バイバイ、幸香」と言って離れていくナナに安心する。
それでも私は、立ち上がることができなくて……
柴本くんはそんな私を、何も言わないでそっとしておいてくれた。
軽く一定のリズムで、ぽんっ、ぽんっ、と背中を叩いてくれる柴本くんの手が、とてもあたたかかった。