「……カズさーん?」
ワタルがカズさんの名前を呼んだその時…
カチャカチャ…
「お…おい、扉が…。」
ギィ…
「…開く?」
「…カズさんか?」
荷台の扉がゆっくりと開き始めた。
「け…警察じゃねぇだろーな…?」
「…ウソだろ?逃げ場ねーぞ…。」
「カズさんやっぱり裏切ったんじゃ……。」
「はぁ…俺が裏切る訳ねーだろ。」
身構えていた俺たちの耳に、聞き覚えのある声が届いた。
「メシにしよーぜ。」
「…カズさん、何か一言言ってから開けてよ。」
警察じゃなくて良かった…。
「わりぃーな。…腹減っただろ?」
「…あー。」
「そーいや、朝から何も食ってねーな俺たち。」
「逃げるのに精一杯だったからなー。」
グゥ…
メシ、という言葉を聞いた瞬間に腹が鳴り始めた。
「メシ食ったら今日は休もう。1日中動き回って疲れただろ?」
カズさんがそう言った。
「…けどまだ夕方の6時ッスよ?いくらなんでも休むのは早いでしょ。」
リョウが携帯で時刻を調べながら言った。
「まったく時間がねぇ訳じゃねーんだ。いざというときに体が動かなかったら意味ねぇぞ?」
確かに。
「…カズさんの言う通りだな。休むか。」
ワタルのその一言に反対するやつは誰もいなかった。



