「気が狂ったか…」

男は、女の顎から手を離した、



「ぎゃ!」

後ろの二人から、悲鳴が上がった。

「な!」

驚き、振り返った男の顔に、鮮血が飛んできた。

「ウググ…」

二人の男の体が、宙に浮かぶ。

コンクリートを貫いて、地面から飛び出したものが、男達の股から、口までを貫いていた。

「どう?いつもつくばかりだから…たまには、いいでしょ」

女は笑った。

二人を貫いていたものが、また地面に戻ると、

二人は地面に落ち、前のめりに倒れた。

口と股から、血が流れていく。

「松井!山田!」

即死だった。

「ハハハハハハハハ!」

女は、高笑いをやめない。

男は、女の方を向いた。

「その顔よ!ククク…あたしも好きよ。たまらないわよね」

女の様子に、気付き…後退る男。

「本当……ここは、いいわね」

「ヒィ…」

軽い悲鳴…。それが、男の最後の声だった。

「残念ね…。趣味が一緒なのに…」





静かになった行き止まりに、携帯の着信音がこだました。

女は、携帯を取ると、電話に出た。

「もしもし…お母さん」

電話は、女の母親からだった。

女は笑い、

「大丈夫よ!心配しないで…」

携帯から、微かに母親の声が、漏れてきた。

「…だって…あの辺は、物騒だっていうから…」


「大丈夫よ!ちゃんと、その道は、避けてるから…」

「綾子…お前に……もしものことがあったら……。お前まで、いなくなったら…」

母親は、泣いていた。

「大丈夫よ!あたしは、兄貴みたいに、いなくならないから…」



電話を切ると、綾子はため息をついた。

転がる三人の死骸に、地面に開いた穴から、飛び出してきた…口に、手足がついただけの魔物が現れ、食らい付く。

「きゃっ!」

唐突に、路地裏に紛れ込んだOLが、その惨劇を見て、悲鳴を上げた。