「待って!こうちゃんは…どうして、この世界に!」

近付けない。明菜は、全身汗だくになる。

「こうちゃん……?ああ…赤星浩一のことね」

炎は、リンネの肉体を燃やしていく。

「彼は……あたし達を追ってきたのよ」

「あたし達?」


リンネはにやりと笑い、

「あたしと…守口舞子…」

呟くように言った。

「守口舞子!」

美奈子は、思わず声を上げた。

美奈子は、彼女を知っていた。

高校時代。

美奈子は、生徒会長をしていた。そして、守口舞子は、副会長だった。

赤星が、異世界に消えた数日後……学校に通っていた五人の生徒が、一斉に行方不明になった。

舞子は、その中の1人だ。

「やはり…彼女達も、異世界に行ってたのか…」

どんなに探しても、警察に捜索願いを出しても、彼女達を見つけることは、できなかった。


「彼女は、この世界に戻ってきたのか!」

美奈子の言葉に、リンネはフッと口元を緩めた。

「戻るという言葉は、似つかわしくないわ…。そうね…」

リンネは考え込み…消える瞬間、ここ言い残した。

「壊しに来た…がいいかしら」


リンネは、消滅した。死んだわけではないだろう。

顔を伏せ、流れる汗を拭わず、明菜は……相変わらず、部外者で、何もできない自分に絶望していた。

(こうちゃん…)

美奈子は、汗を手の甲で拭うと、考え込んだ。

しかし、何もできないし、これ以上何もわからなかった。

美奈子の性格からいって、部外者でいるのは、許せなかったが、

力なき自分に、資格がないこともわかっていた。

(変に…知ってしまった…)

美奈子は、舌打ちした。


明菜は、リンネが消えた空間を、ただしばらく見つめていた。