急いで廊下に出ると、アルテミアはエレベーターに急いだ。

彩香は、もうエレベーターに乗ったらしく、点滅が一階に降りていく。

「チッ」

アルテミアは、舌打ちすると、エレベーターの横にある階段を降りるより、廊下の突き当たりにある窓に、飛んだ。

「モード・チェンジ!」

ここは四階だった。

アルテミアは飛び降りると、着地した時には、僕に変わっていた。

中心から離れた雑居ビルの前は、人通りが少ない。

まだ周りの店が、開く時間でもなかった。

僕は平然と、立ち上がると、

ビルから出てきた彩香に、声をかけた。

「松野彩香さんですね?」

いきなり、横合いから声をかけられ、足を止めた彩香は、恐る恐る声がした方を見た。

僕は深々と、頭を下げると、彩香に近づき、

「怪しい者ではありません。あなたからメールを受け取った者の、代理で来ました」

「メール?」

学生服姿の僕を訝しげに見る彩香に、僕は彼女が送った文面を、口にした。

「人が人でなくなっていく…。それは、演じるではなく……変幻…。あたしは、幻に狙われている…助けて…」

僕の口にした言葉に、彩香はびくっと身を震えさせた。

「少し意味が…わかりませんが……演じるではない。つまり、あなたが所属している…劇団のことですか?」 


彩香はじっと、僕を凝視すると、唇を噛み締め、

「ここでは何ですから…」

僕に背を向けて、歩きだした。

それは、ついて来いということなのだろう。

僕は、距離を置きながら…彩香の後ろを、ゆっくりと歩きだした。