「ふざけるな!」

枝を握る手が、真っ赤になり、熱で焼き切ると、僕は構えた。

反撃に出ようとした僕の全身に、四方から飛んできた枝が絡みつく。

「く!」

車椅子の少年も、立ち上がり、両手を枝にし、僕に絡み付けていた。

「どうした?赤星浩一!」

医師は、焼き切れた腕をさすりながら、叫んだ。

「太陽の勇者といわれたお前も、自分の世界では、ただの役立たずか!」


「くそ!」

焼き切れることは、できる。しかし、できない。

「彼らは、まだ半分人間だ!いずれ、全身が侵食されるがな!」

「くそ…」

僕は、炎で焼き切ることを断念した。

その代わり。

「ギャアアア!!」

枝を伸ばしていた患者達の絶叫が、廊下にこだました。

「電気か!」

床を伝って、テカリ医師の体も痺れだし、片膝を床に落とした。

僕に絡まる枝が、緩んだところで、僕は一瞬にして、廊下から、テレポートした。


電流はすぐにおさまり、廊下には、患者と医師しかいない。

「逃げたか……しかし、この病院にいることは確かだ」

まだ痺れがとれない医師の耳に、校内アナウンスが飛び込んできた。

どうやら、緊急患者が運ばれてきたようだ。

「また…家畜が来たか…。まあいい…多ければ多いほど…我らに、損はない」

立ち上がり、白衣を翻す頃には、医師の腕は…人間のそれに戻り、廊下を歩きだした。

周りにいた患者達も、いつもの姿に戻り、何事もなかったように、過ごしだす。

「てるちゃん!」

廊下の向こうから、声がして、1人の女が近づいてくる。

「あっ!ママ!」

女の姿を認め、車椅子の少年は、車椅子を使って、母親に近寄っていく。満面の笑みで。

母親は、少年を抱きしめ、

「病室に、いなくちゃ駄目じゃない!ママ、心配したわ」

「ママ…」

少年も、母親を抱きしめた。