「どうですかね?赤星浩一くん」

僕の隣に立つ医師が、いやらしい笑みを、こちらに向けた。フルネームで呼ばれるのも、違和感があった。

やけに太り、てかてかした肌をさらした医師は、笑いながら、

「この病院は今…人間の間で、話題となっているよ!病気が、絶対治るってね」

無言で、無菌室を見つめる僕の横顔を、医師はじっと見つめた。

医師の口から、長い舌が一瞬、覗かれた。

「何か問題が、あるのかい?彼女……佐久間梨加も、ここにいるから、まだ生きているのだ」

僕はこたえない。

ただ無菌室からの梨加の微笑みに、微笑みを返し、手を振ると、僕はゆっくりと医師に背を向けて、歩きだした。

「わざわざ…彼女に、同級生とある記憶を、植え付け…過ごしたこともない学校生活を、与えているお前の方が、悪魔ではないのかね?」

僕は、スボンのポケットに両手を突っ込むと、病院の廊下をゆっくりと進む。

「それでも、我々を殺すのか!」

医師の言葉が、赤星の背中に向けて放たれた。


「赤星…」

ピアスからの声が、心配気に僕の耳に響いた。