「何だと!」

僕は、アルテミアになることなく、男の前にいた。アルテミアは、男の瞳に吸い込まれたからだ。

男は微笑みながら、話を続けた。

「今までは、人は定期的に大きな戦争や、殺戮をするように、プログラムされていた。人の数が増えると、僕のような遺伝子の声を聞ける者が、戦争を始めた」




「しかし…人は賢くなりすぎて、人そのものを滅亡しかねない力を、持ってしまったが、故に」

アルテミアの周りで、遺伝子が話す。

「種の保存という…強きプログラムが働き、私のプログラムとぶつかってしまった」



絶句する僕に、男は告げた。

「我々は、プログラムの実行の為に、規模を小さくした。つまり、戦争ではなく、地道な殺戮だ」


アルテミアは槍を脇に挟み、方向感覚のない空間に浮かんでいた。

遺伝子は告げる。

「人に刻まれた…一番、弱きもの…善意や道徳観というものを排除した…」




「もともと…人は…いや、生物に優しさや労り…善意が必要なのか?」


「食べれたら、生きれたらいいだろ?」




「だったら、なぜ殺す!殺す必要が、あるのか!人はみんな、ただ生きたいだけだ!社会や生活を円滑にする為に、協力し、助け合い……その中で、優しさや愛が、芽生えていくんだ!」

僕の言葉に、男はせせら笑った。

「それは、適正人数になってから、やってくれよ」




「人は多い。今の人間の数は、多すぎる。全人類が、食べていく分の食料も、確保できていないのに……なぜに増やしていく」

アルテミアは、遺伝子に唾を吐いた。

「てめえの言い分は、筋が通っていない!」

「なぜだ?」

「だったら…性欲であったり、子孫繁栄を強要する遺伝子を押さえたらいい…」

「駄目だ……。人は、本能が壊れている…無理だ…。快楽という刺激が、人をおかしくした。だから、我々はそこに、注目し……死こそ、楽だという意識を植え込んだのだ」