「お金が、あれば…いいじゃん」

お金があれば、働かなくていいし…毎日遊んで暮らせる。

だけど…さつきが一度アルバイトしていたバーに、毎日働かずに、お金が有り余っている男のお客様が、毎日飲みに来ていた。

朝から晩まで、店から店をうろつく姿は、人の温もりを求めて、彷徨っているように見えた。

人の温もりは、お金で買えない。お金を大量に使うから、店員は優しく相手をするけど…それは、真の温もりではない。

そのお客のそばに、いつも寄り添う水商売の女は、そのお客をつなぎ止める為に、体を売っていたが、

一人で店に来た時、その水商売の女は、ぼそっと言った。

「生きる為よ…」


愛してはいないと呟くように、言った。

そして、そのお客もまた…ある時呟くように言った。

「俺に…金があるから…金があるから、みんな…俺と一緒にいる」




さつきは、生きることの切なさを知った。



あたしは、生きていけるだろうか。

さつきは、生きていく自信がなかった。


動物のように、子孫を残し、自分の血筋を残す為に、生きていけばいいのか。

でも、自分が二十歳になるまでの学校生活や、毎日を過ごすのが、大変だったのに、

自分の子供ができたとして、その子を…こんな世界に、いれることはしたくなかった。


そう…後何年…あたしは、生きないといけないのだろうか。

さつきは、あと何十年も生きていく自信がなかった。

だから、さよならをしたかった。