断末魔の声とともに、数秒で、

新たな死骸が、2つ増えた。

激しく肩で息をし、涙が少しだけ…宮島の瞳から溢れた。

しかし、それが人としての最後の涙だった。


「おめでとう!」

山根は立ち上がり、拍手する。

他の四人も拍手をする。

山根は拍手をしながら、宮島に近づくと、目の前に回った。

今度は立ったまま、宮島に右手を差し出す。

「さあ…行きましょう!」


宮島も頷き、血まみれの右手を差し出した。

だけど、それに気付き、自分の服で拭おうとしたのを、山根は止めた。

宮島の腕をつかむと、血まみれの手を、両手で握り締めた。

「同志よ」

強く握り締めると、山根は宮島を促す。

「さあ!未来へと!あなたが、いるべき場所へ、お連れします」


「ありがとう」

宮島は頭を下げ、笑顔になると、五人に囲まれながら、歩きだした。



宮島の頭から、いじめた三人のことも、新田と遠山のことも…ただ殺戮した生徒達のことも、消えていた。


もう宮島には、どうでもいいことであった。

どしゃ降りの雨の中、宮島は歩きだす。

激しい雨は、校門を抜ける頃には、宮島の体についた血を、ほとんど流し落としていた。


数時間後、学校に遅れてきた生徒の通報により、駆け付けた警察は、犯人の逃走経路を追ったが、

校門の近くから、ばったりと消えていた。

もしその時、警察が近くにあった十階建てのマンションの屋上の手摺りの端を、調べたなら…ほんの少しの血痕を、見つけたかもしれない。


体育館をメインに、そこらじゅうに散らばった死体達は、部分がバラバラに、飛び散っており、

誰のものか判断するのは、容易ではなかった。

その中に、宮島の体がないことに気付くことも。


飛び降りた跡は、見つかり…宮島の血痕が少し残っていたことから…彼もまた、死んだとされた。

あまりにもひどい…どしゃ降りが、正確な捜査を少し曇らせてしまったのだ。