山根は微笑み、

「あなたに相応しい世界へ導く為…私は、ここに来ました」

山根は、血だらけの床に跪き、右手を差し出した。

「俺は……そうなのか…」

自分の行動を肯定され、宮島は、恍惚の表情を浮かべ、山根の手に触れようとした。


しかし、山根は触れる寸前、手を引いた。


「!?」

目を見開き、驚く宮島に、

跪きながら、山根は上目遣いに少し顔を上げ、

「その前に…あなたには、やめることがありましょう」

山根は視線を宮島から、新田と遠山に変え、睨むように、二人を見た。

宮島も振り返る。

そこには、訳がわからずに、ただ怯えるだけの二人がいた。


「か、彼らは…」

宮島が何か言おうとしたが、山根は声を張り上げ、体育館に響くように言った。

「あそこいるのは、弱さに慣れてしまった者達!時間がたち、やり過ごせば、無事に過ごせると思っている者達!」

「あの二人は…俺のとも…」

山根はま、た言葉を遮った。

「友達ではございません!友達ならば、どうして…死にまで追い詰められたあなたを…助けなかった?」

「そ、それは…」

「彼らもいじめられながらも…優越を付けていたのですよ!あいつより、ましだ!あいつが、矢面に立っていれば…自分達が、助かると!」

山根の射ぬくような視線に、新田と遠山は息が詰まり、声が出ない。


宮島は、ゆっくりと顔を新田と遠山に向けた。

宮島の頭に、いじめられた日々がよみがえる。

(そういえば…)

三人でいても、殴られてるのは、いつも宮島だけだった。

助けてくれたことなどない。



宮島の心の奥底から、怒りがこみあげてきた。

その様子を見ながら、山根はにやりと笑った。

その笑みは、新田と遠山を見ている宮島には、見えない。

「さあ!あなたはもう…この生物とは、違う!過去の弱さを、殺すのです」

山根は、楽しそうに笑った。