「………」

しばし言葉なく、綾子を見送った明菜は、何とも言えない気分になっていた。


別に、明菜のせいではないが…真実を知っているから。


いきなり、携帯が鳴った。

「はい」

慌てて出た明菜の焦りに気付き、

受話器の向こうから、心配そうな声が聞こえてきた。

「どうした?」

電話の主は、美奈子だった。

「い、いえ…別に…」

明菜は口籠もった。

「一応…あたしも、神野さんも、大丈夫だ!二駅向こうの駅前で、落ち合おう」

明菜達は、別々に散開していた。

「わかりました…」

明菜は、電話を切った。 


しばらく、また携帯を見つめた。 

美奈子に、綾子のことを言わなかった。

別に隠したわけでなく…先程から消えない…後ろめたさが、明菜の口を動かさなかったのだ。


そのことが…後の対策の悪さに、つながるのだが、

明菜にはわからなかった。

魔獣因子というものを。