「え!」
「え…」

先生が止めに入っても、殴り合いをやめなかった…粟飯原と松田は、突然動きを止めた。

二人で互いの服を掴みながら、顔を見合わせた。



「どうして……俺達は…」

「喧嘩してるんだ…」





校門を潜り、学校を去っていく僕は、ふっと足を止め、

振り返ると、先程までいた屋上を見上げた。


「結局…今回は、何だったんだ?」

「さあな…」

僕は、ピアスを右だけしていた。そこから、声がした。

屋上に呼び出され、悲しく切なげに…僕に感情をぶつかけた奥野は…

紛れもなく……恋に悩んでいた。

あの瞳に、嘘はない。

あの時、魔力も使ってなかったはずだ。

「ただ一つ……わかってることは…あいつは、愛を否定はしていなかった。ただ…どんなものか、わからなかったんだろうよ」


「そうかもしれないけど…」

僕は携帯を取出し、メールを確認した。

助けを求める奥野のメールがあった。

僕は、携帯を閉じ、少し考え込んだ。



「もしかしたら…」

僕は、ゆっくりと歩きだした。


「愛に憧れるが故に…愛を弄ぶ自分を…許せなかったのかもしれない…」



あの時、あの微睡みの中で、僕が頷いたら、


彼女は、永遠にあの中にいたのだろう。

男を惑わす能力を持つからこそ、憧れた純粋なもの。


僕は、切なさを胸に歩きだした。

ほんの数日だが…味わえた学校生活に別れを告げて。