「どうしたらいいのでしょうか!」

最近よく、出入りするようになった店のマスターに、翠は思い切って打ち明けた。


薬をやっている彼が、本当の彼なんだけども…

もう薬が、効かなくなっているし…薬を買うお金もなくなっていた。


「そうですね…」

マスターは、コーヒーを翠に出すと、少し考え込んだ後、


「やはり…病院に入れる方が…」

「だめ!」

翠は、カウンターを叩き、立ち上がると、

「そんなことしたら!彼が、ジャンキーだとわかってしまうわ!彼の尊厳に関わることなの!あたしは、彼の尊厳を守りたいの!」

翠の矛盾した悲痛な叫びに、マスターは肩をすくめた後、

「だったら…あなたが、どうにかしなければいけませんね」

マスターの両目が光ると、翠の背筋がピンと伸び、

「愛するなら…ね」

マスターの言葉に、翠は頷いた。


「愛するなら…」

翠は頷き、店を出た。


「何をしたの?」

後ろのテーブル席にいたお客が、マスターにきいた。

「何もしてませんよ。ただ…ばれないようにするなら…消すしかないでしょ」

マスターは、翠の残したコーヒーを下げた。