燃え尽きた少年達。

1人残った女を、リンネは見下ろしていた。

ボロボロになり、体を震わせる女を見て、

「弱い…」

リンネは呟いた。

「桐子!」

リンネの横を通り過ぎ、達也は桐子に駆け寄った。

しっかりと抱き締めた。

そんな二人を無言で見つめるリンネに、達也は震えながらも、お礼を述べた。

「た、助けてく…」

言葉をいう間もなく、達也は燃え…消滅した。


「…誰かが、助けてくれる……甘いわ」

リンネは、残った桐子を見た。

「ヒイ!」

桐子は、もう恐怖をこえて、動けなくなっていた。

「見捨てた男など…必要ないでしょ?守る力もない癖に、誰かに助けて貰おうなんて…」

リンネは、桐子に背を向けた。

「哀れな虫を、殺す趣味はない」



リンネは、歩きだした。

「力もないくせに…守る力もないくせに…守られることを当たり前に思い…その今の貴重さに、気付いていない」

リンネは、笑った。

魔王により、人を滅ぼす為につくられた自分は、

この世界にいると、意味のない存在に思えてくる。

(こんな人間と…戦う為に、存在する自分…)



自由…安全、人権…すべては、多くの人が得ることのできる権利である。

しかし、その権利を得る為に、民衆は戦ってきた。

安全も、努力で得たものだ。

だけど…今生きる人間は、得ることの苦労を知らない。



いつ…なくなるかもしれないのに……


人は己の為につくった規則すら、守れない。


崩壊は始まっていた。