終了のチャイムが鳴り、授業が終わる。

慌ただしく、教科書をしまう生徒達。

「ちゃんと予習するようにな!特に、赤星」

余計な一言をいわれても、一応引きつった愛想笑いを浮かぶる僕に、にやりと笑う教師。

まあわかっていた。

いじりやすい生徒がいないと、教師はやりにくい。

教師が、完全に出ていくと、粟飯原が僕の席の横に立った。

「ちょっと話がある」

その口調には、怒気が含まれていて、断ることを拒否していた。

でも、その怒りが、僕に向けられていないことは理解できた。

僕は、躊躇うことなく立ち上がると、粟飯原は、

「ここじゃ…なんだから」 

視線は明らかに、僕を見てなかった。

だけど、視線を追うこともできないから、頭の中でシミュレーションした。

(どちらかは…わからない)

奥野も松田も、席が近い。

(……でも、これからわかるさ)

そう僕が考えている間に、粟飯原は歩きだした。

仕方なく…ちらっと視線だけを向けると、

松田と奥野までもが、こちらを見ていた。



教室を出て、廊下を歩き、少し人通りの少ない…図書館へ通じる渡り廊下で、
粟飯原は足を止めた。

渡り廊下の中央で、壁にもたれかかり、

少し後から来た僕に、言った。

「うざいよな。あいつら」



「うざい?」

誰に対してのうざいのか…わからなかった。

少し首を傾げたからだろうか…。粟飯原は、名前を告げた。

「奥野と…松田だよ」

僕のその名前がでた瞬間、唾を飲み込み、

「ふ、二人が…どうかしたの?」


粟飯原は、少し意外そうに僕の顔をじっと見て、

ゆっくりと視線を外した。

「お前は、知ってると思うけど……」

また僕の顔を見て、

「俺は、奥野に告白された」