ガラガラと音をたてて、古くなり立て付けが悪くなった扉を開け、教室に入ると、

一足早く教室に戻っていた奥野早織が、いた。

奥野はちらりと、僕を見ると、すぐに視線をもとに戻した。

奥野の席は、窓側にあり、僕の席とは、真逆だった。

廊下側の真ん中の席に座り……3分程経ち、次の授業が始まる寸前に、粟飯原が教室に戻ってきた。

その後ろを、走ってきた松田が続く。

僕は、奥野…粟飯原、松田を目だけで交互に見、

三人の関係を思い浮かべた。

(奥野さんが……メールを送ったことに、間違いない…。最初は、粟飯原だと思ったが…)

僕は、松田を見つめた。

(彼か……?)

確信はなかった。

なぜなら、まったく反応がないからだ。

(仕掛けるか…?)

自分に問い掛けた時、再び扉が音をたてて開き、数学の教師が入ってきた。 

僕は、舌打ちすると、すぐに教科書を用意した。


「起立!」

日直の号令により、挨拶が終わると、

生徒達は慌ただしく、教科書を開く。

「は〜い。教科書の65ページを開いて!今日やるところは、必ずテストに出るからな」

髪の毛がボサボサで、やさぐれた感じのする教師は、生徒を見回しながら、ふと僕に視線を止めた。

「特に、赤星!お前は頑張れよ」

名指しで呼ばれ、僕は目を丸くした。

苦笑とともに、一斉に教室内の視線が、僕に向く。

僕は恥ずかしさから、下を向き、

(仕方ないだろ!僕はもともと文系なんだよ!)

昔、学校に通っていた時は、文系を志望していたし…高校一年しか、学校に行っていない。

今は、高校二年で…理系の数学である。もう数式というより…何かの呪いに見えた。

(まあ…おとなしく…テストを受けてる…自分がおかしいんだけど…)

僕は、自分の学力を思い知らされ…愕然となっていた。