「どうしてかは、わからないが…やつらの体は…やつらのものでないと…有効ではない」

中村は、ナイフを観察している沙知絵に頷き、

そっと右手を差し出した。

「君の協力が必要だ」

しかし、沙知絵はすぐに…その手を握り返すことは、できなかった。





「…やつらと戦う為の義手や義足の開発を…最終的に、承諾したのは……自分の身に変化が、起きたからだ……最初は、気付かなかった彼女は……」

神野は、目をつむり、思い出すのも、躊躇っていた。

しかし、言葉を続けた。


「俺と沙知絵は、一緒に暮らしていた…が、彼女は、研究に関しては、一切語っていなかった」

神野は、自分の肩を押さえ、

「俺の腕を…引き契るまでは……」





突然の痛みで、目を覚ました神野は、恐るべき光景を目の当たりにした。

腕を口にくわえ、異形の姿をした沙知絵の姿だった。

痛みよりも、その姿に…神野は凍り付いた。

そして、一瞬にして、間合いをつめられた神野は、信じられない力で殴られ、気を失った。




話は戻る。


中村の握手に躊躇う沙知絵の前に、突然…1人の女が現れた。

腕を組み、じっと沙知絵を見つめる女は…見た目は十代にしか見えない。

しかし、瞳の底から感じるものは、恐ろしく冷たい。

沙知絵の震えに気付き、振り返った中村は、女を認め、

「ああ……彼女は、我々の協力者だ」

中村は、女を前に促した。

一歩前に出た女は、沙知絵に向かって、軽く会釈した。

「彼女は…」

中村が言う前に、女は微笑みながら、口を動かした。

「守口舞子です」


「守口舞子……さん…」

訝しげに舞子を見た沙知絵。しかし、先程の冷たさは、笑顔の中で消えていた。

「彼女の証言により……我々は、新たな事実を知った…。進化する人間の真実を!」

そう言って、中村が胸ポケットから、取り出したのは、

カードだった。