ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-






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ここは我の生まれ育った天弧の里。
我は里の主家の長子として生を受け、次期頭領として里を治める定めにあった。


里の掟は絶対である。
故に我の瞳の色がこうであっても、次期頭領としての将来があったが為に殺されることもなく生きることを許された。


………最も、それでも我の瞳は里中から忌み嫌われるものに変わりはない。
故に、我に近づくものなどいなかった。




―――我は孤独であった。
常に屋敷の隅で本を読み、皆の寝静まった夜に鍛練を積む。


屋敷に勤める下働きの者共にすら気味悪がられるこの瞳。
我は、我が憎らしかった。