水面に広がる波紋のように、静かに染み渡る愁の声が私を呼んで。 (…あぁ) 愁の声、だ。すうっと胸のもやもやが消えていく。 「ぬしにはかなわぬ。我が救うたつもりが、逆に救われる」 そう言うと、私をかき抱いた。 「…愁?」 「たまらぬ。我がこのような感情を抱くなど考えたこともなかったわ」 首筋にかかる愁の息がくすぐったい。 ぞくぞくと背中を何かが駆け上がっていくような気がして、私は愁の背中にしがみついた。