メルラバ

ゆっくりと静かに空気が動いて、秋の左手が私の右手首を掴む。

その手の熱さに心臓が震えた。

「唯」

耳元近く。

息がかかるくらいの距離で名前を呼ばれて、鼓膜が破れそうになる。

びくっと肩を震わせた私を見て「怖い?」と秋が聞いてきた。


怖くないと言ったら嘘になる。
はじめてのことは誰だって怖いものだ。