メルラバ

のところで、秋がスッと身を引き、私の耳に音が戻ってくる。

波の音。
それから秋の声。

「そない震えられたら、よぉ出来ん」

と、苦く笑う。

「あ……、私…」

どうしよう。
そんなんじゃない。

秋が怖いとか、そんなんじゃなくて。

「車、戻ろか」

困ったように髪に指を突っ込んで背を向ける秋が途端遠くに見えて、ぎゅっと、秋の服の裾を握り締めた。