メルラバ

だいじょうぶ。

そう言おうとして顔をあげた視線の先、私は秋の黒い瞳に捕まってしまって、完全に声を発するタイミングを失ってしまった。

バチッと視線がぶつかって、睫毛が焦げてしまいそうになる。

その腕から逃げることも、目を逸らすことも、この空気をごまかすことも出来ない。


影が落ちて、スロウモーションのように、ゆっくりゆっくり秋の顔が近付いて、なんにも音が聞こえなくなった。


無音の世界の中で、距離が縮まって、唇まであと3センチ……