部屋に着くなり私は夢遊病者のようにふらふらと覚束ない足取りでリビングへと向かい、中央にでんと構えているソファにぼすんと倒れ込んだ。


まだ電気もつけていない薄暗い部屋の中。

ソファの上、仰向けに寝転がって、意味もなく天井に両手を伸ばす。

伸ばした手で、ぎゅっと空(くう)を掴み、ぱんぱんに膨らんだ肺から二酸化炭素をふぅーと吐き出した。

まだ信じられない。

むしろ、夢オチのほうが安心するくらいだ。

それっくらい幸せで、幸せすぎて怖い。

好きな人に『好き』と言われた。

文章にすれば、たったそれだけのこと。