電話を切って、途端、不安と同時に喜びが押し寄せる。


理由はなんであれ秋に会える。

「いそがなくちゃ」

原稿に保存をかけ、大慌てで着替えてタクシーを呼んだ。

携帯と財布をポケットに突っ込み、玄関へと急ぐ。


何も考えずにドアノブに手をかけたら、いつかのカサブタがはらりと剥がれ落ち、全ての黒い塊が胸の中から消え去った気がした。