手鏡を見て前髪をいじったり、コンパクトを開いてお化粧を直したり、最近の女子高生は忙しい。

でも、それもこれも全て、今から舞台に登場する秋のためなのだ。

少しでも可愛くみられたいという心理。

その心理はわからなくもない。


だけどこういった公共の場で、しかも人前で、マスカラを塗りたくったり、香水をつけ直すその心理は理解に苦しい。

私って、なんだかんだいって、もうオバサンなんだなぁ。

そんなことを思いながらパンフレットを開くと、カバンの中で携帯が鳴った。

着歌『春夏秋冬』。

秋、だ。

別に悪いことをしているわけでもないのに、私はパンフレットで顔を隠しながら、こそこそと携帯を開いた。