「ゆかりー、サークルどっか見て行くー?」

「んー…どうしょっかなー。小夜はどうする?」

「私も迷ってるー。これといって入りたいサークルあるわけじゃないし。」


今日は大学の入学式。
幼、小、中、高とずっと仲の良い小夜――こと『萩野小夜』とは
大学も一緒。今日の入学式も2人で来た。

退屈な入学式を終えた私たちの手の中には
先輩たちが配っていたサークル勧誘のビラでいっぱいある。


「えーっと。ラクロスにバレー、こっちはバドミントンだって。
どれもこれも運動系ばっかじゃん。大学に入ってまで運動とかしたくないな。」

「あー、それ思う。別に得意じゃないし。私も紫も運動部じゃなかったしね。
でもさー、積極的にビラ配りしてんのとか
全部運動系のサークルばっかじゃない?人集めたいんでしょー、きっと。」

「あー、やっぱそうだよね。もうサークル見るのやめよっかな…。」


なんて話してる私たちの前を一人の男の人が通り過ぎた。

背は高く、すらっとした体型。髪はパーマがかかっていておしゃれ、
目元は少しタレていて優しげな雰囲気を醸し出している。

その男の人を見た瞬間、私の周りからは音が消えた気がした。

『かっこいい…』
そう思い、ついつい魅入ってしまう。
自然と目が彼を追ってしまう。



「…かり、ゆかり!」

はっとして小夜を振り返る。

「紫、どうしたの、ぼーっとして。」

「あ、ごめん!…今すっごくかっこいい人がいた!」

「え、まじ!?どこ!?」

「あっちのほうに行ったよ!ねぇ、ちょっと追いかけてみてもいいかな!」

「紫がそんなこと言うなんて珍しいじゃん。いいよ、行ってみよ!」


そして私たちはサークル勧誘で賑わう体育館を後にした。