・・・その頃、

瞬たちは・・・。

〔瞬side〕

「おい、瞬。早く行こーぜ。」

「ったく、焦らせんなよ。」

桐が俺の背中を

ぐぃぐぃ押してくる。

「だって、風呂早く行きたいじゃん。」

「はいはい。んじゃ、行くか。」

「おうっ。」

いつもより落ち着きがない、

桐の背中を見ながら、

俺は風呂場へと向かった。

「おぉーっ広いーっ。」

「そうだな。思ったより広いな。」

人が俺達しかいない分、

もっと広く感じる

気がする。

・・・。

適当に桐の相手をしているから

いいものの、

正直いって、

今の俺は、

あんりのことしか考えられなかった。

洞窟の中で、

いつもよりずっと素直だった、

あんり。

顔はあまり見えなかったけど、

あまりに可愛すぎて。

俺の頭から離れない。

「瞬?・・おーい。」

「っ!何だ?」

「『何だ』じゃ、ねーだろ。どうした?」

「別に、なんでもねー。」

何も知らねーと

いわんばかり、

桐から視線を逸らす。

桐を置いていくように、

露天風呂のほうへと

俺は歩いた。

熱くなったであろう、

頬を、

冷やしたかったから。

「ま、待てって。」

小走りで、

俺の後ろから、

桐が追いついてくる。

「・・涼しー。」

思ったとうり

心地いい風が、

俺の頬を撫でる。

真っ暗な空も、

なんだか見ていると

気持ちが・・・。

落ち着くような気がした。

「な、もしかして、あんりのこと考えてる?」

「っ!んなことねーよ。」

「嘘つけ。」

俺の隣に座った桐が、

にやりと笑った。

「あんり、可愛いもんな。俺には優衣ちゃんがいるけど。」

「うっせーよ。」

なんの恥ずかしげもなく、

話してくる桐を、

少しだけ睨んだ。

「悪い悪い。でもさー。珍しいよな。」

「何がだよ。」

「お前が、そんなに人に執着することが、だよ。」

・・桐の言うとうりだ。

俺は、

今まで1度だって、

こんなに人のことを考えたことはない。

あんりには、

何か、

惹かれるものがあると思うんだ。

俺の行ってる学校なら、

そんな奴いっぱいいるはずなのに、

あいつは、

何か違う気がしたから。

「よかったらさ、話してくんね?」

「・・・。」

少しの沈黙があった後、

俺はやめとけばいいのに、

口を開いた。