もう君には恋はしない

あたしにもわからない、

不思議な表情をしていた。

「瞬は、あたしのこと好きって言ってくれるわよね。」

「そりゃ、そうだろ。」

「だからね、あたしも瞬に伝えたかったの。」

そうよ。

ずっと伝えたかった。

恥ずかしくて、

恥ずかしくて、

たとえ瞬の目が

見れなくても。

こんな暗闇の中でも

瞬にきいて欲しかったの。

「あたしは、瞬が好きよ。ちゃんと、伝わってる?」

「さんきゅうな、あんり。俺も、お前が好きだよ。」

いつもの

優しそうな瞬の顔が、

気がついたら

あたしの顔の目の前にあって。

反射的に

あたしは目を閉じた。

「・・んんっ・・・。」

「っと・・。わり、苦しかったか?」

「だ、大丈夫//」

「そろそろ、帰るか。皆待ってんだろ。」

「そうね。」

あたしは、

瞬の後について行った。

そこで、

「ねえ、瞬っ?」

「な、なんだよ・・・。っん・・!」

ちょんっと

瞬の肩をたたいて、

瞬が振り向いた瞬間。

少しだけ背伸びをして、

瞬の唇に、

唇で触れる。

「・・・っ!お前っ!」

「お・か・え・しっ!・・・なんてね。行こっ。」

「・・・。かなわねえな・・・。もう。」

「ん?何よ。」

「なんでもねー。」

瞬はあたしから、

目を逸らして、

あたしの前を歩く。

あたしは何か吹っ切れたように、

後ろから、

「待ってっ!」

と手を握る。

「お前さ、変わったよな。」

「な、何がっ?」

「なんかさ、俺のこと許してくれてる感じがする。」

「・・・そうかもね。」

「ん?どうかしたか?」

「別に//瞬は、特別だから//」

「お前も俺の特別だよ。」

あたし達は、

顔を見合わせて

同時に笑い出す。

あたし達は

似たもの同士かもしれないわね。

「あっ!美希達だっ!」

「お、ホントだ。」

あたしが、

「おーいっ!」

と手を振ると、

美希達が、

こっちに気づいた。

「あんりーっ!そろそろ帰ろーよ!」

「もうそんな時間っ?」

「うん。ホテル戻ろー。」

「そうだね。」

気づけば、

辺りはさっきよりも暗くなっていて、

ちょっとだけ肌寒い。

早く着替えないと、

風邪ひいちゃうかも。

「優衣っ!」

「あ、あんりちゃんっ!」

「・・ありがとね//」

あたしは小声で言った。

「瞬君とは、上手くいきました?」

「おかげさまで//」

くすくす、と

周りにばれないように

2人して笑う。

優衣も、

桐と上手くいったのかしら?

「早く、着替えよ。外で待たせちゃ悪いし。」

「そうですね。」