玄関のほうに出ると、

ちょうどタイミングよく

優衣達と美希に会った。

「お邪魔しまーす。・・・あっ!あんり。」

「あんりちゃん、おはようございます。」

「おはよ、2人とも。」

あたしが入っていいよ、

と声をかけると、

「あれ?瞬もいんじゃん。」

と、桐が言った。

「よう、桐。はよ。」

「『はよ。』じゃねーよ。お前何時からいんの?」

「わかんねー。あんりが起きてくる前からだな。」

「はやっ!どんだけ好きなんだよ、あんりのこと。」

「今まで会った女の中で、1番。」

瞬は

しれっと答えた。

な、なんて会話を・・・!

本人がすぐそばにいるのに、

そんなこと言わなくてもいいじゃない。

あたしがちらっと瞬の顔を見ると、

にやり

と笑ったような気がした。

「・・・?」

首をかしげていると、

瞬の唇がゆっくりと

『さっきのおかえし!』

と動いた。

っ!

さっきって・・・。

あのキスのことっ?

あたしはかぁーっ//と

顔が赤くなるのを感じた。

「さ、行くか。」

「そ、そうね。」

そんなあたしにお構いなしに、

瞬はあたしの手を握って

ドアを開ける。

「待って。靴紐ほどけっちゃった・・・。」

「あぁ。お前はそのまま立ってろよ。俺がや
ってやる。」

「あ、ありがと//」

いつもは

あたしよりも高いところにある瞬の顔が、

あたしよりも

低いところにある。

なんか、

変な感じ・・・。

瞬の細い指が、

あたしの靴紐を

器用に結んでいく。

「ほら、出来たぞ。」

「ありがと//」

再びあたしの手を握って、

指を絡める。

最近になって、

やっと慣れた普通のことだけど・・・。

こうやって手を繋ぐと、

手だけじゃなくて

他の深いところまで

あったかくなる気がした。

「皆、行こう。」

「そうですね。」

よく見れば、

優衣達も恋人繋ぎで

手を繋いでいた。

恥ずかしいのに嬉しくて、

不安になるけど楽しくて。

それぞれ色んな気持ちを抱えながら、

あたし達の旅行は始まったのだった。

「大好き//」

「・・ん?」

「なんでもない・・//」

あたしの口にした気持ちは

瞬の耳には届かなかったけど。

この旅行で決めたことが、

あたしにはあるのよね。

この旅行中に、

絶対瞬に、

『大好き//』

っていうんだ。

ちゃんと、

目を見て・・//