もう君には恋はしない

次の日。

「・・り、あんり。」

トントン、と

眠ってるあたしの背中を、

何かがたたく。

「・・・ん・・?」

少しだけ目が覚めてくると、

明るい光が差し込んでくるのに

気がついた。

「・・・朝・・?」

「そうだよ。早く起きろ。」

「ん・・・?誰・・?」

「俺だって。お前のか・れ・し。」

あたしの・・彼氏・・・?

瞬・・・?

「しゅ、瞬っ!」

ボーっとしていた頭が

パッと起きて、

目の前にあった瞬の顔に驚いた。

「やっと起きたか。」

「な、何であたしの部屋にいるのっ?」

パチパチと、

瞬きを繰り返してから、

ごしごしと目を擦る。

そんなあたしの姿を見て、

瞬は呆れたように笑った。

「あんまりにも起きてこなかったから、親御さんに言ったんだよ。」

「か、母さんが入れたのっ?」

「うん。瞬君なら、いいわよ。って言ってたぞ?」

「もぉーっ!母さんはぁ・・・。」

あたしは

溜め息をついた。

別に瞬が部屋に入ってくるのは

いいけど・・。

こんな寝起きの姿を

2回も見られるなんてっ!

「瞬。悪いけど、1回部屋から出てくれる?」

あたしは、

ベッドの上で身体を起こしながら

言った。

「何で?」

「着替えとか、しないといけないし・・・。だから。」

「ふーん。俺がいちゃ、ダメなんだ。」

「そりゃ、そうでしょ・・・。」

当たり前でしょ。

着替え見られるなんて、

絶対恥ずかしくて嫌よ。

そんなあたしの心の中がわかったのか、

瞬はこう提案してきた。

と、いうより

言い返してきたのだ。

「じゃあさ、俺後ろ向いてるから。それでいいだろ?」

「へっ?な、なんでそうなるの?」

「だって、見られんのが嫌なんだろ?」

ふふん、と

得意げに鼻を鳴らす瞬を、

あたしは拗ねたように見つめた。

「もー。からかってるの?」

「そうかもな?ほら、時間なくなるぞー。」

「わ、わかったわよ・・・。もぅ。」

あたしはあきらめて

瞬が後ろを向いたのを確認してから

着替えることにした。

瞬はわざとらしく

あたしから距離をとって、

後ろを向いている。

正直言って、

朝からこんなんじゃ夜までもつのかしら・・・?

心臓が

ドキドキいってて鳴り止まないし、

顔も身体も全部が、

熱を出したように熱い。

そんなことを考えながら、

時間のないことに

はっと気づき急いで準備を始めた。

昨夜用意しておいた

ワンピースを急いで頭からかぶって、

瞬の肩をたたく。

「終わったわよ。」

「お、思ったより早かったな。」

そう言って

あたしの方に振り返った瞬間、

瞬の顔が赤く染まった。