もう君には恋はしない

次の日。

ピーンポーンっ!

突然インターホンが鳴った。

こんな平日の朝に誰かしら・・・?

「は、はーいっ!」

あたしは、部屋にまだいたし、

着替えてたから出れなかったけど・・・。

母さんの大きな声が、

あたしの部屋まで聞こえた。

「あ、あんりっ!」

母さんが、出てくれたと思ってたのに

いきなり名前を呼ばれて驚いた。

・・・何があったのかしら?

「はーい。ちょっと待ってー。」

そう言って部屋を出る

あたし。

玄関に行くと・・・。

「よう、あんり。」

あたしの彼氏、

劉蟻瞬の姿があった。

「しゅ、瞬っ!?な、なんでここに?」

「つき合い始めたんだから、家に迎えに行くくらい、いいだろ?」

「べ、別にダメじゃないけど・・・。」

「よかった。」

あたしは全然いいんだけど・・・。

後ろで母さんが、

固まってるのよね・・。

「か、母さん?大丈夫?」

「あ、うん・・・。大丈夫よ。」

あたしが話しかけたら、

やっと母さんは反応してくれた。

「この際だから、紹介しとくね。こいつ、劉蟻瞬。」

「おはようございます。劉蟻瞬です。」

瞬は、

いつもとは全然違う態度で、

母さんに挨拶した。

「あ、あなたがあんりの彼氏?」

母さんは瞬に言った。

瞬はちょっとだけ驚いた顔をしてから、

「はい、そうですよ。」

と返事をした。

母さんは、

なんだか安心したような顔をして、

瞬との距離をつめた。

「・・・あんりをよろしくね。」

そして、瞬の耳元で何かを呟いた。

「はい、もちろんです。」

「ありがとう。」

・・・?

何が、ありがとうなの?

ぶっちゃけ、

あたしには何も

きこえなかったんだけど・・・。

「母さん?なんて言ったの?」

「瞬君にきけば?母さんは、教えなーい。」

「ちょ、母さん?どうしたのよっ?」

あたしは、教えて、

と言わんばかりに

母さんを見つめた。

「ほらほら、そんなことよりも。早く行かないと遅刻するわよ。」

「あっ!忘れてた!」

・・・時間がギリギリなのを。

あたしは準備しておいた鞄を持って、

靴をはいた。

「瞬っ!行こっ!」

「おう。」

「んじゃあ、行ってきまーすっ!」

「はいはい。気をつけてね。」

こうしてあたし達は、

母さんに見送られながら学校へと

一歩を踏み出した。