もう君には恋はしない

「わー!結構広いのねー。」

きょろきょろとあちこち見回していると、

やっぱり色んな人に注目されていることに気がついた。

「・・堂々としてれば、いいのよ。」

あたしは、そう自分に言いきかせることしか出来ないのだから。

すると・・・。

「す、すみませんっ。」

「はい?」

あたしは、反射的に振り向いた。

「どうか・・しましたか?」

「わっ。きれいな人・・・。っじゃなくて、その、今からどこにいけばいいんでしょうかっ?」

・・・相変わらずの反応だなぁ・・・。

「よかったら、一緒に行きますか?クラス発表を見て、とりあえず教室に行くときいていますから。」

「はっはいっ。ありがとうございます!」

女の子は、おどおどしくついてきた。

あたしが歩くと、なぜか話をしていた人たちも、あたしのほうを見てる。

・・なんで?

「あ、あの。あなた、名前はなんていうの?」

無言で歩いているのも不自然かと思って、あたしは話かけた。

それなりに友達もいたわけだから、

コミュニケーションのとりかたくらいはわかる。

「私・・、ですか?」

「うん。」

「私の名前は・・・。飛鳥優衣・・です。」

「優衣・・ちゃん?」

「はいっ。」

どうやら、あってるようだ。

この子もあたしと同じで、高校から入ってきた子なのかな?

「高校から、入ってきたの?」

「は、はい。だから、友達がいなくて・・・。」

あたしとおんなじだ。・・よくみると、可愛い子だな。

「じゃあ、あたしと、友達になってよ。」

「い、いいんですか?」

「なんで、そう思うの?」

「だ、だって・・・。」

優衣はそう言って、あたしの顔をちらり、と見た。

「あたしの顔が、気になる?」

「だ、だって・・。そんなにきれいな人、きっとこの学校にもいないと思うから・・・。」

「そんなわけ、ないじゃん。いいから、よろしく、優衣。」

あたしは、スッと右手を差し出した。

「・・よろしくお願いします。倉狩野さん。」

優衣は、少し迷ったように視線をさまよわせた後、あたしの右手を握った。