もう君には恋はしない

教室に入った途端、

「おいおい、見せつけかよー。」

と桐の声がした。

あたしにヒミツで事情を教えてくれた

いい奴。

・・・なんだけどね。

「おはようございます、あんりちゃん。」

「おはよー優衣。」

今日も清楚な雰囲気を纏う

優衣。

大学に進学しても、全然変わらない。

「瞬君と、元に戻れたんですね♪」

「うん、ありがと。」

ニコリ、と微笑みかけてくれる優衣は

まさにいい子の代表だ。

「にしてもよぉ、お前らまだなんだろ？」

ニヤニヤしながら、近づいてきた桐は

あたし達に質問した。

「？なんのこと？」

あたしは全然わからずに、首をかしげた。

「ば、ばかっ。何言ってんだよ。」

「お、瞬。赤くなってやんの。」

一方瞬は、何かを察したらしく

桐を口止めしている。

「あんりちゃんは、その辺には疎いですからねぇ。わからなくて当たり前です。」

「へ？な、何？優衣もわかってんの？」

「あはは。そのうちわかりますよ。」

「むぅ・・。」

ちょっと泣ける。

なんで皆わかってんのに、あたしはわかんないんだろ？

「ヤれば？保健室空いてっぞ？」

「ばか！言うな！」

「大学入っても、青春してんなー〔笑〕」

「うっせー！」

当たり前のようで、当たり前じゃなかった

瞬と桐の会話。

２年ぶりだからかしら？

高校１年の頃がよみがえったみたいで

思わず涙がこぼれた。

「おわっ！あ、あんり！？」

「な、何？」

「お前・・・泣いてんのか？」

「・・あまりに懐かしくて、ゴメンね。」

皆に心配かけたくなくて

あたしは少しだけ笑った。