もう君には恋はしない

「何?まだ落ちねーぞ?」

「ずっと握ってちゃ、ダメ?」

瞬があまりに脅かすせいで、少し涙目になりながら

上目づかいで瞬を見つめる。

「ダメなわけないだろ。」

「ありがと・・//」

瞬の体温が、手から伝わって

少しずつ身体から力が抜ける。

もう、大丈夫かな・・・。

「あ、落ちるぞ。」

「えっ?・・・きゃーっ!」

そうこうしてるうちに、コースターは

滝の手前まできていたみたい。

あまりにいきなりで、

大声を上げてしまう。

本当は目を開けてるのがいいんだろうけど、

そんな余裕は、ない。

ぎゅっと目を瞑って、瞬の手を握って

必死に落ちる恐怖と戦う。

身体が浮くような、本当に落ちてしまうような感覚が

どうも慣れなくて、恐怖を煽った。

「あんり、もう終わったって。」

「え・・・?」

「お前、顔色やばいぞ?大丈夫かよ。」

瞬に手を引かれて、

とりあえずコースターを降りる。

持っていた鏡で、自分の顔を映すと

その顔はいつもより青白かった。

「観覧車、乗らねぇ?休憩ってことで。」

「うん。乗る。」

まだ1人も人が乗ってない

観覧車に、すんなりと乗り込む。

「ゴメン。驚かせちゃって。」

「俺は別に平気だけど。お前、まだ震えてんじゃん。」

「ホントだ・・・。」

今まで見てなかった左手を、じっと見ると、

その手は、カタカタと震えていた。

「苦手なら、言えっていったろ?」

「昔は、大丈夫だったのに。ダメになっちゃったわ。」

昔は、あんなコースター、

3回でも、4回でも乗れたのに。

ちぇ、身体の変化は早いなぁ・・・。