「澪っ美月っ聞いて聞いてー!」

入学式から2週間が経ち、ようやくクラスのみんなと打ち解けてきた頃。

優香がいきなり美月達に告白した。

「え!まじ!?おめでとーっ」
「やったじゃん!」

なんと、優香が2組の川口大輝と付き合うことになったらしい。

「2週間前、男子達とアイス食べたじゃん?あの日から仲良くなっていって。昨日2人で遊び行った時に、告られたんだー!」

目の前で嫌というほどはしゃぐ優香に、美月と澪は強く抱きしめた。

「優香おめでとう!」
「なんか進展あったら報告してねっ」


休み時間になると、早速川口が優香の元にやってきた。

「ごめん、行ってくるっ」

嬉しそうな優香の背中を眺めてたら、今度は澪が騒ぎ出した。

「見てよ、美月!三浦君、今くしゃみしたよ!超可愛いーっ」

澪の場合、好きというよりファンみたいになっている。

「あーだねー」

三浦君は男子と何やら楽しげに喋ってる。

澪は真顔の三浦君が
タイプらしいけど、どちらかというと私は笑い崩れた顔のが好きかも。

どちらかというと、ね。

「澪、そんな三浦君の事好きなの?」
「好き…なのかなー。よく分かんない」

澪はさっきからずっと三浦君から目を離さない。

好き…なのかな、これ。

「三浦っていう子、格好良くない?」
「あー確かにっ」

不意に耳に入った言葉。

澪は三浦君に夢中で聞こえてないらしく、相変わらずキャーキャー騒いでる。

私は廊下をチラリと見た。

3人の女子が、窓から顔を覗きながら喋っている。

多分他クラスの子だろうけど、三浦君てそんなイケメンなんだなってつくづく思った。

「ねー澪っやっぱ私、三浦君の事…好きだと思う?」

いきなり澪に顔を覗き込まれ、私は慌てて首を傾げた。

「そんなん自分にしか分かんないでしょ!」
「だって、自分でもよく分かんなくてー」

三浦君がまたくしゃみをした。

きっと花粉症なんだな。

「私、予備マスク持ってこればよかったー」
「は?」
「もしかしたらマスクあげた事をきっかけに仲良くなれたかもなのにーっ」

澪の考える事には少し感心する。

私には考えられないというかなんというか…。


その時だった。

廊下で話していた3人のうちの1人の女子が、急に5組の教室に入ってきたのだ。

そしてそそくさと三浦君の元に向かって行った。