次の日、昼休みに川瀬梓を呼び出し、「俺と付き合え」と言った。




昨日噂してた奴に聞くと、どうやら川瀬梓は“毒舌”らしい。


その噂は本当だった。





面白い……っ




俺はそのまた次の日、梓のクラスに遊びに行った……


のだが、




奴は全然俺に見向きもしない。


つーか、1度も目が合わない。




なんだか寂しく感じた。



俺は2組に戻り、机に突っ伏した。



……はぁ~。


アイツはどうすれば俺の事を見てくれんだ…。



どうでもいい奴ばかり俺にキャーキャー言ってきやがって




肝心の本命が俺に対して無関心だなんてな…




………





ちょっと待て…




俺は梓の事……好きなのか?



今まで誰かに本気で惚れた事なんて無かったから分かんねぇが




そうか…俺、




アイツの事………





昼休み――
「伊東君っ♪今日こそ一緒にお弁当食べよ」




チッ…



また来やがった。



香水をプンプン漂わせ、俺に近づく同じクラスの加藤由紀。


ぶりっ子は嫌いなんだ。俺。




「ねぇ、伊東君?」



無駄な上目使い…


気持ち悪ぃ…っ。




「離れろ。お前に用はねぇ」



冷たい態度と言葉で加藤を打ちのめした伊東は



梓の後を追った。




廊下を歩いている途中、伊東は色々考えた。




何で俺は好きな奴を手に入れる事が出来ねぇんだ…。



さっきから俺が通るたびに振り返りやがるウザい視線。



いい加減にしてくれ。




俺だって女遊びなんざしたくねぇよ。




ただ、寂しいだけなんだ…



両親を早くに亡くして、それ以来父方の祖母と一緒に住んでいる。



寂しい…




高校生になってから、俺は女遊びをし始めた。


抱いてはすぐに捨てる




それを繰り返していた。



皆俺の事を好きと言ってくれた。



だが、皆…俺の顔だけしか見てくれなかった。



それでも、皆自分の思い通りになって


気分が良かった。





だけど、もうそんな事はしたくねぇ。



だって




もう俺の心にはアイツしか映らなかったから。