「おい!そっち持てよ!」
「俺、今、手離せない」
「ペンキ足んねーぞ!」
 7月に入って、学祭の準備が本格的になってきた。遊ぶ暇もないくらい忙しい。
 そして、俺たちが別れて1ヶ月が経った。
 でも、学祭の忙しさがその事を忘れさせてくれる。ある意味有り難い。
「ちょっと休憩しない?」
 そう言いながら牧が差し入れらしき大量の袋を手に教室に入ってきた。
「担任から」
 牧がそう言って床に置いた途端、男子たちが飛びついた。
「おい!他の奴らのことも考えろよ!」
 だが、奴らは聞いちゃいない。
「ったく」
「まあまあ。ほら、聖二も取らないと」
「俺、余りもんでいいよ」
 袋から人が減るのを待っていると、ふと視界に彼女がはいった。
 さっきまで袋に集っていた男子の一人が彼女に自分がとったであろうそれを渡していた。
 別れてから彼女と話していない。噂によると、まだ彼氏はいないらしい。まあ、それは俺も同様だが。なんたって、俺はまだ彼女に未練タラタラだ。
「好きなら別れなきゃ良かったのに」
 横から牧がすかさず突っ込んだ。
「……牧」
「聖二、彼女見すぎ」
「なんたって片想い中なんで」
 冗談交じりに言ってみたものの、自分の言葉で落ち込んだ。